中国 小説 おすすめ

発行者: 22.11.2022

女主人公小玉が、持ち前の武人魂?でガサツに、けれど的確に、後宮を掌握していく物語…? 主人公の活躍ぶりがかっこよすぎて、姐御!とかお姉様!とか呼びたくなります 笑. 主人公はマイペースだけど物語は急展開 。作者の表現力が豊かで、後宮の様子が、美しさが手に取るように分かります! ミステリーというか、冒険小説というか、恋愛要素は本当に少しだけ!.

三位 日出 曹禺の話劇。「雷雨」「原野」と合わせて彼の代表的な作品の一つ。資本主義社会の行き詰った現実を、資本家の娼婦である陳白露や孤児の小東西、下っ端銀行員としてこき使われる李石清など、様々な階層の人物を絡ませ、ホテルの一室を中心として描く。骨太なテーマ、わかりやすい物語構造、立ち位置の明確な登場人物達と、非常によくまとまった作品。年代以降増大していた、資本主義への不信や社会不安が見事に暴き出されている。日の出というタイトルに反して、物語は終始暗い。 曹禺は近代以降の中国における代表的な劇作家。嬉しいことに日本では彼の主要作品が全て翻訳されているし、たまに舞台上演も行われている。中国文学を学ぶなら絶対抑えておくべき作家の一人だと思う。. 十位 三国志演義 もはや説明不要、後漢末から三国統一までを描く壮大な歴史絵巻。相次ぐ戦いの中、次々に生まれては倒れていく英雄達の姿が心を揺さぶる傑作小説。 現代日本に跋扈するあらゆる三国志ものの原点。その割に、ファンでも本作をきちんと読破している人は少ないのでは。 本作の優れた点は、史書や野史、民間講話も含めバラバラに書かれていた出来事を一つの物語に編み直し、かつ史実と可能な限り照らし合わせ(演義の史実考証は当時基準で見れば一級品である。ある程度中国通俗小説を読めばわかるが、大抵は史実追求の姿勢などゼロに等しい。だからこそ当時の小説が低俗だという評価にも繋がった)、さらに武将同士の一騎打ちや軍師たちの奇想天外な計略といった、物語を盛り上げる虚構要素を存分に組み込んだこと。特に虚実のバランスが素晴らしい。やり過ぎて荒唐無稽になる通俗小説が多い中、演義は素晴らしいレベルで虚実の均衡を保っている。 本作にとって不幸なのは、小説に漫画にゲームにアニメと、現代日本で模倣作が生み出され過ぎたことだと思う。多数の作品が存在するから、演義自体の欠点も浮き彫りになってしまう。戦闘シーンや人物描写の厚み、小説技法、史実考証、人物改変といった点で、後代の小説にどうしても負ける部分があるのは致し方ない。それをいちいちあげつらって、一部の心無いファンは「だから演義はダメだ」などと言ったりする。 それでも、あらゆる三国志小説の土台を作り上げた点で、演義の偉大さは揺るがない。四大名著の一角として是非読んで欲しい傑作。.

後宮にいながら夜伽をしない皇妃。「烏妃」と呼ばれる彼女は 不思議な術を使い、依頼にこたえる 探し物から呪殺まで! 姿を見せず、声すら不確か。お付きの侍女は0。 そんな主人公の元に皇帝が訪れて?! これまで太平の世、平和であった後宮に事件が起きる…?!. 八位 倪煥之 葉紹鈞の中編小説。理想に燃える教師の倪煥之が、新式教育の推進をはかろうとするも、現実の壁にぶつかり挫折するまでを描く。 これは本当に面白い。当時の中国における教育業界の実態を、作者の実体験も含めて描いている。改革の黎明期だけに、どうして国と人々に教育が必要なのか、それがどんな役に立つのか、といったことが高らかに語られる。一方で、教育を金儲けに利用する者、教育の理念に理解を示さない親達(学校に行かせておけば、遊んでいる子供の世話をする手間が省ける程度にしか考えていない)など、様々な障害もきっちり描かれている。そのほか、倪煥之と同じ理想の持ち主だったヒロインが、結婚した途端凡庸な主婦に成り下がってしまう展開も面白い。 ちなみに中盤から作者が迷走し、小説とは呼べない主張の垂れ流しが始まり(翻訳者が匙を投げて省略するほど)、物語も半端な結末を迎えてしまうのがちょっと残念。.

六位 阿Q正伝 魯迅の中編小説。無知な人民・阿Qが自らを破滅させていくまでを描く。当時のみならず現代に至るまで、中国人の根底に存在する精神的病理を風刺した作品。ねじ曲がった自尊心、権力への無意味な従属、現実から目を背ける阿Qは、中国人の負の面を凝縮した存在でもある。阿Qを取り巻く人々もまた同様で、ラストのおぞましい場面は魯迅自身の体験が反映されている。 日本での知名度も高い魯迅だが、彼の作品は全体的に難しい。どれも当時の中国社会と密接に関わっている内容なので、ある程度歴史知識を備えてから読むのが望ましいと思う。また魯迅の本領は小説よりも散文にある。日本は魯迅研究が盛んで、作品の邦訳も豊富に揃っているので、機会があれば是非そちらも読んで欲しい。.

十位 子夜 茅盾の代表的長編小説。舞台は年代の上海。資本家、労働者、共産主義者、軍人、ブローカー、様々な階層の人々と、その周辺で起きる事件が絡み合い、資本主義の複雑な実態と限界を描く。 当時の中国社会をまるごと語ってみせた、贅沢な作品。大変面白い反面、とても読みにくい部類の小説だと思う。何せ膨大な数の登場人物が出てくるうえに、投資や革命、労働争議などあっちこっちに話が飛ぶ(茅盾小説につきものな特徴でもあるけれど…)。またちょうどこの時期の中国は混乱の極みで、物語の背景も色々ややこしい。作中でも丁寧に書かれてはいるが、やはりある程度の歴史知識はあった方がよい。 ちなみに作品テーマは上で紹介した「日出」と共通点も多い。そして日出の方が物語も人物もすっきりまとまっている。子夜が駄目だったらそちらを読めばいいと思う。.

七位 閲微草堂筆記 清代の志怪小説集。作者・紀昀が身の回りで聞いた珍奇な物語を書き記したもの。志怪小説ジャンルの最高峰は?と聞かれたら間違いなく「聊斎志異」なんだけれども「聊斎志異」を読んだ後に本作を読むと、こちらがより文芸として洗練されてるのがわかる。「聊斎志異」が単に怪奇をつづってハイおしまい!なのに対し、本作は奇々怪々な物語を通じて、作者が社会風俗や人間の生態に疑問や主張を投げかけている。これがいちいち深くて唸らされる。単なる物語で終わっていない。霊的な現象や存在をレンズにして、人間というものを探求する作者の姿勢に大きな文芸的価値を感じる名作。出来れば、聊斎志異を一緒に読むことをおすすめする。 *聊斎志異…こちらも清代の志怪小説集。作者は蒲松齢。質・量ともに高い傑作。清代における志怪ブームの火つけ役で、多数の模倣作を生んだ。.

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八位 西遊記 明代の神魔小説。四大名著および四遊記の一つ。皆さんご存じ、三蔵とその弟子達の取経物語。少ない主要人物に加え、ストーリーも一本道なので、四大名著で最も読みやすい作品だと思う。三蔵達の活劇に隠れがちだが、当時の社会を風刺した描写や台詞も多く、単なるエンタメで終わっていないのもポイント。 特筆すべきはやはりスケールの大きさ。話は何百年にもまたがり、舞台は唐から遠い遠い天竺、降りかかる災難の数々に、十万八千里をはじめやたらと盛られる距離や年齢やステータスの数字。これぞ中国という感じがする。 さらに外せないのがバラエティ溢れる方術やアイテムの数々。発想の奇天烈さもさることながら、名前を読むだけで楽しくなってくる。三教(儒教・仏教・道教)同源のカオスな世界観も楽しい(最初読んだ時はなんてムチャクチャな設定なんだと思ったけど、後になってこれが当たり前なのだと知った)。神魔小説の神髄がほぼ詰め込まれているので、中華ファンタジー好きなら是非読破すべし。. 三位 日出 曹禺の話劇。「雷雨」「原野」と合わせて彼の代表的な作品の一つ。資本主義社会の行き詰った現実を、資本家の娼婦である陳白露や孤児の小東西、下っ端銀行員としてこき使われる李石清など、様々な階層の人物を絡ませ、ホテルの一室を中心として描く。骨太なテーマ、わかりやすい物語構造、立ち位置の明確な登場人物達と、非常によくまとまった作品。年代以降増大していた、資本主義への不信や社会不安が見事に暴き出されている。日の出というタイトルに反して、物語は終始暗い。 曹禺は近代以降の中国における代表的な劇作家。嬉しいことに日本では彼の主要作品が全て翻訳されているし、たまに舞台上演も行われている。中国文学を学ぶなら絶対抑えておくべき作家の一人だと思う。. 前回に引き続き、おすすめの中国小説ランキングです。 今回は文学革命以降の近代小説を紹介しています(勝手な区分で申し訳ないですが、ここでは文化大革命より前を近代扱いとしました)。 古典小説に比べると作家・作品が多様化していてとても悩んだのですが「中国の歴史や文化について深く学べる」「幅広く読んで欲しいので、同じ作家の作品はなるべく避ける」「現代の日本人がある程度とっつきやすい作品にする」あたりの要素を重視して選んでいます。 ちょっと手に入りにくい邦訳もありますが、大学図書館や研究室なら確実に置いてあると思います(私のいた大学には全部ありました)。.

六位 阿Q正伝 魯迅の中編小説。無知な人民・阿Qが自らを破滅させていくまでを描く。当時のみならず現代に至るまで、中国人の根底に存在する精神的病理を風刺した作品。ねじ曲がった自尊心、権力への無意味な従属、現実から目を背ける阿Qは、中国人の負の面を凝縮した存在でもある。阿Qを取り巻く人々もまた同様で、ラストのおぞましい場面は魯迅自身の体験が反映されている。 日本での知名度も高い魯迅だが、彼の作品は全体的に難しい。どれも当時の中国社会と密接に関わっている内容なので、ある程度歴史知識を備えてから読むのが望ましいと思う。また魯迅の本領は小説よりも散文にある。日本は魯迅研究が盛んで、作品の邦訳も豊富に揃っているので、機会があれば是非そちらも読んで欲しい。.

別記事でも紹介している十二国記。 平凡で内気な女子高生が、突然異世界に連れていかれる! そこは中国古代の世界が12の国に分かれた神仙のいる場所で…? しかも異世界ではぐれて一人旅!主人公が異世界に連れてこられた目的は…?主人公を執拗に狙う襲ってくる魔獣に自分を連れてきた人の影が…?. 五位 中国現代文学珠玉選 1~3巻 二玄社刊行の短編小説翻訳選。全三巻。このランキングは基本的に長編ばかりなので、短編から中国近代小説に触れてみたい方のためにご紹介。本作では中国近代の主要作家がほぼ網羅されている。もともと大学授業の副読本として作られているので、収録作品も講義でよく使われるような有名作品ばかり。もし中国文学を学ぶなら読んでおいて絶対に損は無い。 収録作でのオススメは、時代に置いて行かれた知識人の悲劇を語る魯迅の「孔乙己」、教育差別の実態が生々しく描かれた簫紅の「手」、自己陶酔が半端ない郁達夫の「蔦蘿行」、辺境独特の恋愛模様が面白い沈従文の「夫」、父と母と娘の歪んだ愛を描く「心経」、父と子の異なる視点で学校問題と貧富を語る張天翼の「包さん父子」あたり。. アニメ化されている、恋愛要素は皆無な中華ファンタジー。 女主人公が剣と己の心で道を切り開く冒険小説! 結末も続編も読まずにはいられません! 心の弱かった主人公が出会いや裏切りを得て少しずつ強くなっていく姿が応援できるし面白いです!.

八位 倪煥之 葉紹鈞の中編小説。理想に燃える教師の倪煥之が、新式教育の推進をはかろうとするも、現実の壁にぶつかり挫折するまでを描く。 これは本当に面白い。当時の中国における教育業界の実態を、作者の実体験も含めて描いている。改革の黎明期だけに、どうして国と人々に教育が必要なのか、それがどんな役に立つのか、といったことが高らかに語られる。一方で、教育を金儲けに利用する者、教育の理念に理解を示さない親達(学校に行かせておけば、遊んでいる子供の世話をする手間が省ける程度にしか考えていない)など、様々な障害もきっちり描かれている。そのほか、倪煥之と同じ理想の持ち主だったヒロインが、結婚した途端凡庸な主婦に成り下がってしまう展開も面白い。 ちなみに中盤から作者が迷走し、小説とは呼べない主張の垂れ流しが始まり(翻訳者が匙を投げて省略するほど)、物語も半端な結末を迎えてしまうのがちょっと残念。.

別れて気づいた                         .

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七位 駱駝祥子 貧しくも実直な働き者の車引き・祥子の苦難を描く老舎の代表作の一つ。頑張っても頑張っても豊かになるどころか、一層貧しい立場に追い込まれてしまう祥子。何故なら労働社会は、必ずしも真面目な人間が報われるように出来てはいない。祥子はそのことに気がつかず、愚直に働き続け、ついに精神を病んでしまう。まさにブラック企業に使い潰される人材そのもの。良くも悪くも真面目な働き者が多い日本人には、共感出来る部分が多々ある小説だと思う。虎妞と小福子、祥子をめぐる二人の女性の物語も印象深い。 四世同堂と同じく、老北京の人々や風俗、そして車引きの生態が細やかに描写されている。初めての老舎作品として大変おすすめ。.

女主人公小玉が、持ち前の武人魂?でガサツに、けれど的確に、後宮を掌握していく物語…? 主人公の活躍ぶりがかっこよすぎて、姐御!とかお姉様!とか呼びたくなります 笑. 前回に引き続き、おすすめの中国小説ランキングです。 今回は文学革命以降の近代小説を紹介しています(勝手な区分で申し訳ないですが、ここでは文化大革命より前を近代扱いとしました)。 古典小説に比べると作家・作品が多様化していてとても悩んだのですが「中国の歴史や文化について深く学べる」「幅広く読んで欲しいので、同じ作家の作品はなるべく避ける」「現代の日本人がある程度とっつきやすい作品にする」あたりの要素を重視して選んでいます。 ちょっと手に入りにくい邦訳もありますが、大学図書館や研究室なら確実に置いてあると思います(私のいた大学には全部ありました)。.

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アニメ化されている、恋愛要素は皆無な中華ファンタジー。 女主人公が剣と己の心で道を切り開く冒険小説! 結末も続編も読まずにはいられません! 心の弱かった主人公が出会いや裏切りを得て少しずつ強くなっていく姿が応援できるし面白いです!. 五位 今古奇観 明代の短編小説選。四大名著をはじめとした長編章回小説は長くてしんどい!という方は少なくないと思う。そんな方々におすすめ出来る作品。本作は、三言二拍と呼ばれる二百近い短編小説集から、さらに四十編を選んでまとめたもの。どのお話も健全で毒が無く、すんなり読むことが出来る。ジャンルも才子佳人もの・人情もの・偉人もの・公案もの・訓話ものと色々揃っており飽きさせない。庶民の話が多いので、当時の生活習俗を知るのにもうってつけ。伯牙、李白、唐寅など歴史上有名な人物が主役のお話もある。個人的にオススメするのは、お嬢様の転落劇「两县令竞义婚孤女」、貧しい油売り青年と売れっ子妓女の恋愛譚「卖油郎独占花魁」、スーパー才女・蘇小妹のラブコメ「苏小妹三难新郎」、いかにも中国的な婚礼トラブル話「金玉奴棒打薄情郎」あたり。別ブログで抜粋レビューも書いてあるので、もしよろしければどーぞ。 今古奇観レビュー.

一位 紅楼夢 中国古典四大名著の一つ。さる大貴族・賈家の興亡を背景に、主人公賈宝玉とヒロイン林黛玉の、前世から結ばれた因縁の恋愛が繰り広げられる。 間違いなく中国古典小説史上の最高傑作。優れた人物描写、幾多の伏線をちりばめた物語構成、虚実と現実を巧みに織り交ぜた設定、完成半ばで作者が亡くなったことにより残された謎の数々……読めば読むほど人を引きつける作品。 紅楼夢が他の三名著(三国志演義・水滸伝・西遊記)と比べて優れているのは、中国社会のリアルや本質を描いたところだと思う。三名著は史実を下敷きにした虚構のお話。だから登場人物は理想化され、善悪が二極化し、物語も事実と乖離しやすい。本作はその真逆で、虚構の世界に仮託しながら、作者の半生がモデルとなった事実を描いている。紅楼夢には中国のありのままの姿がある。面子の立て方、出世の仕方、男女の作法……どこを読んでも「ああ、中国人だな」と感じさせてくれる。またストーリーを通じて、社会・思想・芸術・言語など、多岐に渡る分野への言及がある。下手な中国文化入門本を読むより、本作を読む方がよっぽど中国への理解に繋がる。 人物に関しては、とにかく女性描写がスゴイ。実在の女性をモデルにしたとはいえ、男性が書いたとは思えない観察眼が光る。メインヒロインの金陵十二釵は特に白眉(別記事で彼女達のことを書いているので、よろしければご覧ください)。 本作の魅力について語ると無限に終わらないので、まあこのへんで。中国小説に興味があるなら、是非一度読んで欲しい傑作。ちなみに、とっつきにくい作品としても有名なので、ある程度他の作品を読んでからチャレンジすべきかもしれない(私もハマるまで何回も挫折しました)。 別ブログで全話紹介記事書いてるので、こちらもよろしければどーぞ。 紅楼夢全話レビュー.

以上、中国近代小説オススメ作品紹介でした。 近代中国は激動続きの時代ですが、中国文壇もその影響を多分に受けています。年代の文学革命以降、それまで軽んじられていた小説は、人々を啓蒙する立派な文学としての役割を担うようになりました。そのため作品には革命や抗日など歴史・政治に関わるテーマが深く込められ、重たくてとっつきにくいイメージがあります。また政治による文壇への干渉も多く、日中戦争期や国共内戦時はプロパガンダじみた作品ばかりが書かれたり、作家の作品性が捻じ曲げられたりといったことも起きています。 そんな時代に書かれたからこそ、近代小説は中国を知るうえでまたとない学びになる作品も多いです。 また日本で邦訳されている作品は、いわゆる文芸路線が殆どで、大衆路線小説はあまりありません(大衆路線小説は、読み物として人気を博していたものの、文壇からは軽視されがちでした。代表的な作家達は鴛鴦蝴蝶派と呼ばれています)。中には張恨水のように、何度も原作がドラマや映画になっている人気作家もいるので、もっと日本でも知られるようになってくれればなぁ、と思う次第。 ちなみに、古典小説便覧との姉妹作「中国近代小説便覧」もありますのでよろしければどうぞ。作家紹介、簡単な文学史、訳本一覧などが載せてあります。 中国近代小説便覧.

九位 西廂記 才子佳人劇の元祖にして頂点。才気あふれる書生・張君瑞と、宰相のお嬢様・崔鶯鶯のラブロマンス。厳しい礼節でガチガチにかためられ、男女が面と向かって話すことも咎められた儒教社会。そんな時代の恋愛を描いた傑作戯曲である。本作を読めば、近代以前の中国における男女恋愛の実態がとってもよくわかる。 後の中国小説にも多大な影響を与えており、数々の模倣作を生んだほか、登場人物や場面が色んな物語に引用されている。 作中で特筆すべきキャラクターは、張君瑞でも崔鶯鶯でもなく、二人の恋愛を助けるキューピッド侍女・紅娘だと思う。低い身分に生まれた彼女は、主人達が重んずる男女の礼節もまるで気にしない。「会いたいなら会えばいいでしょ! 何くだらないことで悩んでるんですか!」「夜を一緒に過ごす? じゃあ布団を用意しておきますね!」と、ガンガン背中をプッシュ。しまいには、カップルの仲を裂こうとする鶯鶯の母へ堂々と啖呵を切ったりもする。主人のため東奔西走する姿が実に魅力的。 中国古典文学大系の戯曲集に翻訳が収録されている。.

アニメにもなっており、シリーズとして完結済。コメディとしても、シリアスな物語としても、読み応えのある作品。 ただ、逆ハーレム要素も多少あるので、とっても苦手という方は避けた方が…?. 二位 家 巴金の自伝的小説。由緒ある大家族・高家。その新世代の三兄弟と、古き悪習に満ちた家との静かな戦いを描く。 中国近代小説における代表的なテーマの一つ「悪しき儒教社会からの脱却や闘争」が描かれている。進歩的な教育を受けた高家の三兄弟は、厳しい長幼の序列、女性差別、無意味な呪術信仰といったものに散々苦しめられる。長男の覚新はそれに屈服、次男の覚民は妥協の道を探し、三男の覚慧は徹底的に反抗と、三者の異なる選択が見所。また、妾になることを強要され自害する侍女、家庭のしきたりに従順だったせいで死に至らしめられる若妻など、この時代につきものな女性の悲劇も沢山描かれている。 大家庭の没落というお話は紅楼夢を彷彿とさせるが、外部から押し寄せる圧力にまったく無力だった賈宝玉や林黛玉と異なり、それに抗おうとする人物がいることは、中国の近代社会における変化や救いを感じられる。 実は三部作で「春」「秋」の続編もあるのだけれど、邦訳が出ていないのは残念。ただ、ドラマや話劇でも「家」のみで完結させている例は多いので、これ一作だけでも十分楽しめる。一時期岩波文庫で絶版になり、古書店でも凄い値段で売られてたりしたが、最近復刊した。.

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中国近代文学の先頭に立った魯迅の短編集『阿Q正伝・狂人日記 他十二篇(吶喊)』

二位 家 巴金の自伝的小説。由緒ある大家族・高家。その新世代の三兄弟と、古き悪習に満ちた家との静かな戦いを描く。 中国近代小説における代表的なテーマの一つ「悪しき儒教社会からの脱却や闘争」が描かれている。進歩的な教育を受けた高家の三兄弟は、厳しい長幼の序列、女性差別、無意味な呪術信仰といったものに散々苦しめられる。長男の覚新はそれに屈服、次男の覚民は妥協の道を探し、三男の覚慧は徹底的に反抗と、三者の異なる選択が見所。また、妾になることを強要され自害する侍女、家庭のしきたりに従順だったせいで死に至らしめられる若妻など、この時代につきものな女性の悲劇も沢山描かれている。 大家庭の没落というお話は紅楼夢を彷彿とさせるが、外部から押し寄せる圧力にまったく無力だった賈宝玉や林黛玉と異なり、それに抗おうとする人物がいることは、中国の近代社会における変化や救いを感じられる。 実は三部作で「春」「秋」の続編もあるのだけれど、邦訳が出ていないのは残念。ただ、ドラマや話劇でも「家」のみで完結させている例は多いので、これ一作だけでも十分楽しめる。一時期岩波文庫で絶版になり、古書店でも凄い値段で売られてたりしたが、最近復刊した。.

九位 西廂記 才子佳人劇の元祖にして頂点。才気あふれる書生・張君瑞と、宰相のお嬢様・崔鶯鶯のラブロマンス。厳しい礼節でガチガチにかためられ、男女が面と向かって話すことも咎められた儒教社会。そんな時代の恋愛を描いた傑作戯曲である。本作を読めば、近代以前の中国における男女恋愛の実態がとってもよくわかる。 後の中国小説にも多大な影響を与えており、数々の模倣作を生んだほか、登場人物や場面が色んな物語に引用されている。 作中で特筆すべきキャラクターは、張君瑞でも崔鶯鶯でもなく、二人の恋愛を助けるキューピッド侍女・紅娘だと思う。低い身分に生まれた彼女は、主人達が重んずる男女の礼節もまるで気にしない。「会いたいなら会えばいいでしょ! 何くだらないことで悩んでるんですか!」「夜を一緒に過ごす? じゃあ布団を用意しておきますね!」と、ガンガン背中をプッシュ。しまいには、カップルの仲を裂こうとする鶯鶯の母へ堂々と啖呵を切ったりもする。主人のため東奔西走する姿が実に魅力的。 中国古典文学大系の戯曲集に翻訳が収録されている。.

五位 中国現代文学珠玉選 1~3巻 二玄社刊行の短編小説翻訳選。全三巻。このランキングは基本的に長編ばかりなので、短編から中国近代小説に触れてみたい方のためにご紹介。本作では中国近代の主要作家がほぼ網羅されている。もともと大学授業の副読本として作られているので、収録作品も講義でよく使われるような有名作品ばかり。もし中国文学を学ぶなら読んでおいて絶対に損は無い。 収録作でのオススメは、時代に置いて行かれた知識人の悲劇を語る魯迅の「孔乙己」、教育差別の実態が生々しく描かれた簫紅の「手」、自己陶酔が半端ない郁達夫の「蔦蘿行」、辺境独特の恋愛模様が面白い沈従文の「夫」、父と母と娘の歪んだ愛を描く「心経」、父と子の異なる視点で学校問題と貧富を語る張天翼の「包さん父子」あたり。.